(1)相続登記とは
以下、一般的な相続登記についてご説明します。
不動産を所有していた人が亡くなった場合に、相続によって不動産を取得した相続人が、不動産の所有者の登記名義を自己の名義に変える手続きのことを「相続登記」と呼んでいます。
現在の登記名義人は、該当の不動産の登記事項証明書を法務局から取得すると確認できます。相続が発生しても、勝手に不動産を取得する相続人に登記名義が変わるわけではありませんので、取得者が相続登記を申請する必要があります。
相続登記には、遺言書による相続登記、遺産分割による相続登記、法定相続分による相続登記があります。
原則として、遺言書による指定がある場合は遺言書による相続登記を行います。
遺言書による指定がない場合で、相続人全員による話し合い(遺産分割協議)によるときは遺産分割による相続登記を行い、遺言書による指定がなく、遺産分割協議も行わないときは法定相続分による相続登記を行います。
相続人が二人以上いる場合で法定相続分による相続登記を行った後、改めて遺産分割協議によって不動産の取得者を決めたときは、再度遺産分割による相続登記を行う必要があります。
ただし、不動産を複数人で共有することは、様々なデメリットがあります。事情にもよりますが、一般的には共有になる登記はあまりお勧めできません。
相続登記をせずに長期間放置していますと、将来の売却が困難になる恐れや、権利の安全に問題が出る恐れがあります。
また、これまでは、相続登記は義務ではなかったのですが、2024年4月1日より義務化されることが決まりました。(「相続登記義務化」については、別にコラムを書いていますので、そちらをご覧ください。)
相続登記は、対象不動産を管轄する法務局に申請することによって行います。
対象不動産は、登記済証(権利証)・登記識別情報通知・固定資産税の納税通知書や、名寄帳・公図などで確認・調査します。また、最新の登記事項証明書を取得して、現況を調べます。
(2)申請人
申請人は、不動産を相続によって取得した相続人です。
相続登記の申請は、不動産を取得した相続人がご自身で行うことも、司法書士に依頼することもできます。
おかれている状況によって、相続登記にかかる労力・時間・リスク・費用などは大きく変わってきますので、手続きに不安があれば一度司法書士にご相談されることをお勧めします。
(3)必要書類
相続登記申請の必要書類は状況によって変わります。参考として一般的な書類を以下に記載します。このほかに追加で必要になる場合や、必要書類が変わる場合などがございますので、予めご了承ください。
〇遺産分割による相続登記
・登記申請書
・遺産分割協議書(相続人全員により作成)
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍一式
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(登記簿上の住所・本籍地の記載のあるもの)
・相続人全員の現在の戸籍謄本又は抄本
・不動産を取得する相続人の住民票
・固定資産評価証明書(最新年度のもの)
・委任状(司法書士に依頼する場合)
〇法定相続分による相続登記
・登記申請書
・被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍一式
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(登記簿上の住所・本籍地の記載のあるもの)
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・不動産を取得する相続人の住民票
・固定資産評価証明書(最新年度のもの)
・委任状(司法書士に依頼する場合)
〇遺言書による相続登記
・登記申請書
・遺言書(検認が必要な場合は検認済みのもの)
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(登記簿上の住所・本籍地の記載のあるもの)
・不動産を取得する相続人の現在の戸籍謄本又は抄本
・不動産を取得する相続人の住民票
・固定資産評価証明書(最新年度のもの)
・委任状(司法書士に依頼する場合)
(4)費用
費用は、上記必要書類を集めるためや申請にかかる費用(市区町村役場・法務局等への手数料、郵送費、交通費など)に加え、登記をする際に登録免許税という税金を納める必要があります。
登録免許税は、相続登記の場合、原則として固定資産税評価額の0.4%になります。ただし、軽減税率適用などによって、税率が変わる場合があります。司法書士に依頼した場合、これらの費用に加えて、司法書士に対する報酬が別に発生します。司法書士報酬は事務所ごとに異なります。
(5)申請
申請は、対象不動産を管轄する法務局に行います。窓口での申請、郵送による申請、オンラインによる申請などがあります。詳しくは、法務局のホームページをご覧ください。
(6)登記完了
法務局への申請後、不備が無ければ、通常約1~2週間ほどで登記が完了します。繁忙期など場合によっては完了まで一か月以上かかる場合もあります。登記完了後は、登記識別情報通知(いわゆる権利証)などが法務局から発行されますので、郵送・窓口などで完了書類を受け取ります。
(2024/3/14記)